とぅーす!
三代目ストナンの【鬼】こと、ふりーまんです!
今日は久しぶりのナンパ実録記事。
……
その日は所用があったので、仕事を早く終えて新宿に行き、その帰りにおっさん向けの居酒屋のカウンターで飲んでいた。
体調がいまいちなこともありナンパする気も起きず、軽く酒を飲んで帰るつもりだった。
バーではないので一人で来ている客は少なく、カウンターに座っているのも二人組ばかり。
まだ時間が早いからか、カウンター席も半分くらいは空いている。
自分はハイボールを頼んで、文庫本を読みながらちびちびと飲んでいたのだが、30分ほどしたところで、自分のすぐ隣の席に女性客が案内されてきた。
この店に女性の一人客?
おばさんか?
自分のようなおっさんが隣に座るなら何も驚くこともないが、深夜でもないのに、こんな普通の飲み屋に女性の一人客が来るとは珍しい。
しかもちらっと横目で見ると、恥じらいという言葉をとっくの昔に捨ててきたおばさんではなく、まだ20代にしか見えない。
がっちり見ることはできないので、何度かちらっ、ちらっと横目で見るが、デザイナ-やアパレル系の仕事でもしていそうな雰囲気で、この居酒屋にはまったく似つかわしくない。
彼女は最近流行りのちょっと大きめの眼鏡をしていて、オレンジ色の照明の下で見ても肌の白さが目立っていた。

(↑こんな感じの子)
まさかこの店で女性に声をかけるつもりはまったくなかったが、こういう偶然もあるものだ。
声をかけようか、それとも彼女のことは見て見ぬ振りをしようか……。
自分は一人で飲むつもりだったから、顔にBBクリームを塗っていないのはもちろん、髭も剃っていなかった。
ただ幸い、髪だけは一応セットしていた。
さすがに髪もノーセットだったら、話かけなかったかもしれない。
相変わらず正面のお顔は確認できなかったので、横顔美人で正面から見たら……という可能性はあったが、自分は髭も剃っていないくらいだし、それならそれでやむなし、と思って声をかけることにした。
隣の席に座っているので、ストリートナンパみたいに無理矢理テンションを上げて、こちらの話を聞かせようとするのは得策ではない。
酔ったおっさんに気さくに話かける感じで、軽く話を振る。
ただ、こちらが酔っぱらって声をかけたと思られると、たとえ居酒屋でも印象は悪いので、その辺は注意しながら。
「今日は一人ですか?」
「はい」
「へー、洒落たバーとかなら一人で飲んでる女性もいるけど、こんな感じのお店で若い女性が一人で飲んでるのは初めて見たかも」
「ですよねー笑」
「そんなこと言ったらお店に失礼か笑」
「笑」
「てか、デザイナーさんですか?そのおしゃれな眼鏡といい、全体のファッション、雰囲気といい、そっち系の香りがぷんぷんするよね」
“そっち系の香り”。
ここでちょっと軽めのユーモアを入れていく。
本心でデザイナーとかグラフィックなどの美術系かなと思ったのだが、直接的ではなく暗に褒めた形にしているのもポイント。
ようやく正面から彼女の顔を見ることができた。
ちょっと落ち着いた感じだが、整った顔立ちをしているのはもちろん、知的な面持ちが自分好みであり、印象的だった。
「よく言われるんですよー笑」
「だよねー。すんげー、そういう系の香りが漂ってきてるよ笑」
いい感じに乗ってきてくれた。
ただ、本当に一人で飲みたいということもありうる。
「迷惑かな」とびくびくしながら話すのはもちろんダメだが、一方的になりすぎないよう、相手の反応を見つつ、ぽつりぽつり話かける。
自分の予想は完全に外れていて、彼女の仕事は美術系でもアパレルでもなく、大手商社勤務で総合職をやってるバリキャリ子だった。
出身は九州、大学から東京に出てきて、今の会社に就職したらしい。
そろそろかなと思い、恋愛話を振る。
「で、今は彼氏さんと一緒に住んでるの?」
「住んでないですよ」
「そーなん。別居中?」
「まだ結婚してませんから笑」
「そか、結婚はまだか。彼氏さんてどんな人なん?もしかしたら女性?」
「何で女性なんですか?笑 彼氏、今はいませんよ」
美形でお洒落だが、フワついた雰囲気ではなく、どちらかといえば真面目そうな感じの子なので、こちらもあまりテンションを上げすぎずに話す。
「へー、もう男は飽きたかー笑」
「そんなことないですけど笑」
過去の恋愛事情を聞いてみたが、2年ほど前に彼氏と別れて今は独り身。
言い寄ってくる男もいるが、仕事も忙しく、気ままな独りの生活に満足していて、彼氏を作りたいという気もあまりないらしい。
「ふーん、そうなんだねー」
男女の会話で恋愛話は鉄板なのだが、独りでいるのが好きだったり、仕事に打ち込んでいたりして、現状に満足している子の場合、話が膨らまないこともある。
彼女もそんな感じだったので、恋愛話は適当に切り上げ、再度仕事の話を振った。
「へー、じゃあ、今は仕事一筋っていう感じ?」
「そんなことはないですけど……」
彼女は、その大手商社で人事の仕事をしていた。
人事の仕事は就職活動していた頃からの希望していて、今も仕事自体には満足しているが、会社の組織的に営業系の部署の力が強く、人事は発言権が弱い。
別に出世して社長を目指しているわけではないが、その辺がやりにくく感じることもある。
それに大手ゆえに昔ながらの日本企業的な社風が強く、このままでずっとここで働いていたら、意思決定の速いベンチャー企業や外資系企業などで働けなくなるのではないか。
そんな漠然とした不安を抱えていた。
転職しようと思えば、今ならかなり広い選択肢の中から選ぶことができる。
本格的な転職活動はしていないが、年齢的にもキャリア的にも今の会社に残るべきか、迷っていた。
自分も転職経験があるので、さらっとその時の話はした。
だが注意したいのは、初めて会ったばかりの間柄だし、彼女はこちらに転職するべきかどうか、アドバイスを求めているわけではないということ。
男は女性から悩みを打ち明けられるとアドバイスをしたがるが、女性からしたらただ共感してほしかったり、話を聞いてほしいだけで、具体的なアドバイスを求めているわけではない。
今回もまさにそれ。
だから、自分の転職経験について軽く話はしたが、説教臭くならないように気をつけるのはもちろん、彼女の話を聞きながらも、ところどころ軽い冗談を入れたりして、重くならない空気を作るようにした。
気がついたら、彼女と話し始めてから1時間以上経過していた。
今回は飲み屋で隣の席になったというちょっと特殊なパターンだが、狙うならダラダラと話し込むのは禁物だ。
彼女は淡々としたタイプで、仕事についてはいろいろ話してくれたが、サインもはっきりとわからず、イケるという確信はなかった。
だが自分もぼちぼち飲んだので、ダメ元でアクションを起こすことにした。
「俺、そろそろ出るけど、一緒に行く?」
「え、どこに行くんですか?」
「転職相談所。俺も給料100倍UPを目指して、転職相談しようかなと思って笑」
「なんですか、それー笑」
「ま、それは冗談だけど、気分転換で別の店で飲もうかなと。一緒に行く?」
もちろん「近くに○○が美味しい店があるから行ってみよう」とか理由をつけて誘うのがベストな誘い方だ。
だが、ぱっと思いつく店もなかったので、話題に上がっていた転職ネタを使いつつ別の店に誘った。
まだ一人で飲むという回答だったら、LINEだけ交換して次回に再度挑戦するつもりだったが、幸いにもOKが出た。
店を出てハンドテスト。
この感触次第では、連絡先だけ交換して2軒目に行かずに帰ることも考えていたが、彼女はしっかりと握り返してきてくれた。
あとは淡々とやるだけ。
「こっちの方に誰も知らない超VIP向けの転職相談所があるんだよ笑」
そんな話をしながらホテルの方に歩いていく。
ホテル前で軽くグダられたが、軽いグダは一種の儀式みたいなもの。
真に受けずに、堂々かつ冷静に対応すればよい。
今回は飲み屋で知り合って、という変則パターンだったが、無事クロージングできた、という話。
本日は以上!